喫茶人形 〜メイドの恋〜
「ユキナ…?!」
―――… 違うんです…
リョウスケと二人で食べるお弁当は
いつも、とても美味しくて…
…逃げてるから
夜は絶対につけられない電気…
テレビが無いから
その真っ暗闇の中で
高速道路を走る、車の音だけを聞きながら
朝まで部屋に、ひとりでいることも…
全然…なんとも…
「…リョウスケは、部屋にいるのか?」
私は…首を横に振った
「―― そんなに、彼が好きか…?」
「……ッ…」
… 一気にまた、ノドがつまって…
返事の代わりに…
自分では止められない涙がボロボロと
アサノさまの胸に落ちて行く…
「…別荘で
君達が惹かれ合っているのは
薄々、わかってはいた…
だから今日も
君達ふたりの気持ちが確かなら
そのまま、帰るつもりでいたんだよ」
「……」
それからずっと
かなり長い間、私は泣いて…
やっと落ち着いた頃
…書庫で見た、"あのこと"を
思いきって、聞いてみることにした
「…ア…サノさま」
「ん?」
「…アサノさまは
私の両親と…知り合いなんですか…?」