喫茶人形 〜メイドの恋〜
最初は、少し驚いた顔
でもすぐに、アサノさまは柔らかく笑う
「…いつ知った?」
「本…を、 眠れない時に…
それで…本の間に
三人でいる写真が、はさまってて…」
「…随分探したのに
そんな所にあったのか」
アサノさまは
"なんだ"って感じで、小首を傾げる
「…私のお母さんの、こと
好き…だった…んです…ね…?」
「ああ 大好きだった」
「……」
「そして君の、お父さんの事も」
「!」
アサノさまは
組んだ脚の上で、両手をそろえ
とても懐かしそうな表情で
明け始めた、窓の外を眺めた ―――
「…俺はいわゆる、いじめられっ子でね
人と話すより
本と一緒にいる時間の方が長かった
ある日 ―――
読んでいた本を、ヒョイと取り上げて
俺の世界に 突然入り込んで来たのが
ユキナ、君のお父さんだったんだ」