喫茶人形 〜メイドの恋〜



玄関先で
頭を下げる、おじさんと
サチコさんからコートを受け取り
門のほうへと歩き出す姿を追った


「アサノさま…ッ!」


「…ユキナ」


「も…もう帰っちゃうんですか?」


「…顔が 見たかった」


「え…」


「寒いから、もう中へ戻りなさい」




…… 前にも一度
こんなことがあった気がする


…いつも一人で『屋敷』から
すぐに出ていってしまう
とても変わった『マスター』



あの時は…
アサノさまが今みたいに
微笑んでくれたことが、嬉しくて


だけど今は…

うまく言えないけど

少し、苦しい…




門から敷地へ
ライトをつけた車が入って来て


アサノさまは
少し空を見上げてから
身をかがめて、中に乗った




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