喫茶人形 〜メイドの恋〜



それにあれから…

アサノさまは、私に触れない ――

もちろん私も
もう他の人と…
なんのキモチもなく
そういうことするのは嫌だ…


だけど私は元々
『花嫁』としてやって来た『ドール』で


だから私…
ここにいても いいのかなって…
ずっと、今でも
そう思ってる …―――




「…ユキナちゃん
家に入りましょ

せっかく元気になったのに
風邪をひいてしまったら
また旦那さまに、ご心配かけますよ」


「…はい」




トオヤマさんに…
"うぬぼれんな"って言われたとき
わけがわからない状態だったけど

ホントに…
私ひとりじゃ
なにも出来ないんだなぁって…


皆に助けられて生きてるんだって…
最近やっと、それがわかって来た…


だから勉強
あまり得意じゃないけど
今私に出来るのって、これだけだし


…たくさん休んだりもしたから
とにかくガンバロ!って
そう…思ってる…




プルルル

…ル


「…あれ?」

何回か鳴って
切れてしまった、家電のベル


プルルル…
プルルル…



「ハイハイハイ ハイ 」

またすぐに鳴って
サチコさんが取って
でも、すぐに首を傾げて
受話器を置いた


「サチコさん…?」


「また間違い電話
最近、なんだか多いのよね」




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