喫茶人形 〜メイドの恋〜
くりかえすキス…
雨が降っていたのに
とてもに静かになって…
いつの間にか
ガラス扉の向こうは
雪が舞い散り始めていた
…ユイファさん
ユイファさんは、このビルばかりの街で
小さな頃から…育ったんだね…
田舎もないって
さっき、聞いたよ…
ユイファさんの言ってた海って
どこのことだったんだろう…
小さな頃に行った
海なのかな…
―― それともそんな場所
最初から…
どこにもなかったのか…
それはもう二度と
聞けはしないけれど…―――
「―― はい
…はい ユキナと一緒にいます
わかりました」
…え?
顔を上げると ―――
ケータイを開いてる
…やっぱりあの頃よりも
大人っぽくなった
リョウスケの表情…
茶色い瞳で、柔らかく笑って…
話してる間もずっと
私の頭を…撫でていてくれる…
少しすると、カチリと片手で
閉じたそれを 腰に戻した
「…二人で先に戻ってろって
行こう」
「――……」