喫茶人形 〜メイドの恋〜




"あの街"のキラキラのほうが


何倍も、何倍も…


輝いて見える 時期があるんだ…


だってそれは、私もそうだったから…




… 家から抜け出すのは


すごく怖かったけど…


自分たちしかいない、夜の道


駅や、量販店のトイレでのメイク


ゆれる人で出来た 大きな波


空で回る、ガラスの月と


ブルーハワイの上で 弾ける花火



だけど ―――…


沖に見えてる、遊泳禁止の旗


行ってはいけないラインが


とてもあやふやなのは


どっちも…同じなのかもしれない…




「も…
どぉすんのリョウスケ〜〜!
制服びしょびしょになっちゃったし〜!」


「すぐ乾くって!

待ってな タオル持って来てやるから」


「ゃ… 私も行く…!」


「なッ…!車すぐそこだろ?!」


「でもいいの!」




私は…小さくて


…弱くて


それでも…



「タオルタオル…あった!」


「ありがとう!リョウスケも早く…
…ってテキトーにふく癖あるし!
やっぱ私がふく!こっち向いて!」




「なあ ユキナ」


「うん!
あはは お風呂あがりの犬みたい〜!」




「…結婚 しよっか」




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