喫茶人形 〜メイドの恋〜
だけど
花火は、それっきり
打ち上げられることはなくて…
「時間も時間だし…
最後の何発か
それとも予行かもしれないですね」
高台
停まった車の窓から
身を乗り出して
前髪を風にゆらしながら
リュウスケがいった
「そっかぁ…」
私も、夜空を見上げる
プル…
――――… !!
プルルル…
プルルル…
プルルル…
そして
アサノさまのケータイが鳴って…
私はそれが誰からなのか
なんとなく、分かってたんだ…
「…はい ええ」
左胸のポケットから出した
ケータイを右手に持ち替えた時
リリスさまの本名が、画面に見えたし
別荘には
リュウスケだけ残して行く
って言ってたけど
それは多分、ないと思う
きっと誰かに見られてて…
―― アサノさまは
ああ言って下さったけど
マスターに逆らうことは『掟やぶり』
それはとても、重い罪なんだ…
私が入る少し前に
『屋敷』から逃げ出したドールがいて
とても厳しい処分を受けたって
うわさも聞く
だから ――――
「白川」
「はい かしこまりました」