ハッピーアワーは恋する時間

「今は、あなたたちの結婚の話ではなくて・・まぁ、沢田さんが中島さんと結婚できないのは、至極もっともなことだから、これ以上言い合いをしてもしょうがない。だから今は、新居をどうするのか、ハッキリさせましょう」
「そうですね。すみません。あなたは、これから赤ちゃんも生まれるんだから、お金は入用になるわよね。だから私もそこまで請求はしない。家具はあなたの好きにして。あの女とあのマンションで一緒に暮らしてもいいじゃない」
「そんな・・・・・・分かった。分かりました。じゃあえっと・・・俺は、解約しませんので」
「分かりました」と言った不動産屋のおじさんの声は、心底ホッとしているように聞こえた。

それからすぐ、おじさんは、彼ひとりで部屋を借りるという新しい契約書を作り、私と博文さんはそれにサインをして、どうにか私の解約をすることができた。

「それじゃあ、私はこれで」
「待てっ！未散・・」
「中島さん。あなたにはまだ説明しないといけないことがあるから」と、おじさんが彼を引き留めてくれた間に、私はサッサと不動産屋を出た。