ハッピーアワーは恋する時間
お嬢様的に上品なこの人が、おにぎりを食べるとか・・・しかも、パクッとかぶりつくなんて想像つかなかったけど、実際見たら、その食べ姿にも品があって、私は密かに感心してしまった。

しかもこのおにぎり、すごく・・・。

「おいしい!」
「でしょう?」

本当に何の変哲もない、ごく普通の三角おにぎりなのに、体の隅々まで行き渡るような美味しさを感じたのは、生まれて初めてのことだった。

「ところで。あなたはライラックがお好きなんですか?」
「え?」
「さっきライラックを見ていたでしょう?」
「・・・嫌い。嫌いです。特にライラックは大嫌い!」

会ったばかりの、しかも介抱してくれた上に、おにぎりまでごちそうしてくれてる人に八つ当たりしてる私って・・・どこまでバカなんだろう。

俯いて、自己嫌悪に陥っている私に、女の人は、心底意外な言葉をかけてきた。

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