ハッピーアワーは恋する時間
「そろそろあなたのお名前をお聞きしてもいいかしら」
「あぁはい!沢田未散です」
「まぁ!何て素敵なお名前!あなたのことは“みちるさん”と呼んでも良い?」
「どうぞ」
「私の他に、妹の冬美と秋恵が時々お店を手伝ってくれているので、私のことは、“はるか”と名前で呼んでください」
「え!でも、あなたは私の上司ですから・・・さんづけでいいですか」
「いいですよ。それから佐久間」
「はい?」
「いい加減にあなたも“春花”と呼びなさい。私はもう“お嬢様”じゃないんだから」
「え!いや、あの。それはごもっともなんですが、俺、いや私にとってあなたは、いまだにお嬢様で・・・」

アタフタしながら必死に弁明している佐久間さんって、なんか・・・面白い!
と思った私は、気づけばおなかをかかえて笑っていた。
そんな私につられるように、春花さんと佐久間さんも笑っていた。


・・・「捨てる神あれば拾う神あり」とは、よく言ったものだ。
博文さんに騙された私の心は、ズタズタに傷ついた。
だけど、そのおかげで、春花さんと佐久間さんに出会うことができた。

さらに春花さんの好意で、この部屋を住処にさせてもらうことができた私は、小さな花屋「ライラック」の店員として働き始めた。

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