ハッピーアワーは恋する時間
・・・あれは中1の時に行った、林間学校での出来事だった。
キャンプファイアーをしていた時、男子生徒たちの“いたずら”で、あわや森林火事になりかけてしまった。
幸い、火事には至らず、怪我人も出なかったけど、以来私は、炎と煙が怖くなった。

タバコ程度の小さくて細い煙だったら怖くないし、映画やテレビで観る火災シーンも、自分がそこにいないと分かっているから怖くない。
料理のガス台の火も大丈夫・・・だけど、今住んでいるマンションでは、電磁調理器を使っている。
とにかく、炎とも呼べる規模の火から立ち込める大きな煙を目の当たりにすると、私の全身から、恐怖心が湧き起こってくる。

たぶん、火事になりかけたあのとき見た煙に、飲み込まれそうになったような感じがしたこと、燃え盛る炎から出た無数の火の粉が、降りかかるように私に当たったこと。
それらが私の中に恐怖心として根付いてしまっていると思う。
私の左腕には、火の粉が当たってできた火傷の痕が、29の今でも残っている。
近くでよく見ないと分からない程度の薄ーい痕だけど、それはまるで、私の恐怖心の象徴であるかのように、小さな点として残っている。

公園でのバーベキューなら、キャンプファイアーみたいな火は焚かないはず。
ということは、煙だってモクモクとわかないはず。
だったら・・・大丈夫。

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