【短編】愛トキドキ憎しみ
ガタンッ!


私はバッグを持ったまま、勢い良く教室を飛び出していた。



……嘘だよね?


友達の口からでも、電話でも、ましてやメールでもなくて。


私は慎司の口から直接聞きたい。


……真実を。



廊下を駆け抜けながら、登校してくる生徒の中に慎司の姿がないか必死で探す。


慎司……早く会いたいよ。


激しく上下する肩。


下駄箱に着いたところで立ち止まり、両膝に手をついて呼吸を整える。


未だ息は上がっているけれど、早く会いたいその一心で顔を上げて再び探しにいこうとした。



………。



なんてタイミングがいいんだろう。


顔を上げた先には慎司がいた。


不意に目が合う。


まるで……ここだけ二人の世界かのように時が止まる。



いつもみたいに笑いかけ……てはくれなくて。


ほんの一瞬だけど、目を逸らしたのを見逃さなかった。


気まずそうでいてどこか力ない表情。



「慎司、話があるんだけど」


「……あぁ」



その声と雰囲気は、普段の慎司とはかけ離れたものだった。



――悪い予感。



さっき亜美たちが言っていた言葉が脳裏に浮かぶ。




『路チュウしてたんだよ!』


『腕組まれて二人消えていったの!』


『隣のクラスの……と』



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