【短編】愛トキドキ憎しみ
私も靴に履きかえ、いつもの裏庭にやってきた。


昨日はここであんなに楽しい時間を過ごしたと言うのに。


今日は二人とも無言。


重苦しい雰囲気が、慎司に何かあったことを物語っている気がしてならない。



ねぇ、キス……したの?


私が聞いたら笑い飛ばすよね?


「バカじゃないの?」って。


誤解だって、見間違いだって。


いつものように意地悪っぽく言うよね?



私は震える声を絞りだし、慎司に直球で問い掛けた。



「昨日浮気……したの?」


「……あぁ」



その言葉に体中の血の気が引くと同時に、勢いよく血が流れだすのを感じた。



「は? それ本気で言ってる?」


「あぁ、セックスした」



どういうこと?


何あっさり認めてるの?


否定も弁解もなし?


ってかキスだけじゃないの?



言いようのない怒りが体の奥から込み上げてくるのが分かる。



『浮気するわけないじゃん、俺には玲花だけ』



……あの言葉はなんだったの。



『あいつマジで玲花に惚れてるよな』



……違ったみたいだよ。




それに、何で……。

よりにもよってその相手が……。



信じられない……。



「玲花だって」


「もういい!! 聞きたくない!!」



私は慎司の言葉を遮ってその場から走り去った。



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