【短編】愛トキドキ憎しみ
“彼氏”と“友達”じゃなかったの?


何で二人して裏切ったのよ……。


何で浮気の相手が千理なのよ……。


頭の中はもうグチャグチャ。



家に帰る気にもなれず、電車に乗って二駅。


海の砂浜の上でボーッとつっ立っていた。



夏の暑い日差しが私のイライラを増す。


だけど、これ以上ないってくらいイライラさせて欲しかった。



本当に好きだったからこそ、慎司の行為が許せなくて、憎くて憎くて……。


何だかんだ言っても友達だと思っていたからこそ、千理の行為も許せなくて、憎くて憎くて……。



二人に抱いた憎しみ。



こんな感情を抱いた自分が嫌で。


私が持ってしまったこの感情をここに捨て去りたくて。


この感情を暑さで溶かして欲しくて。



太陽は真上から陽を降り注ぐ。


……もうすぐお昼かな。


慎司から何度か着信があった。


音を聞いただけで慎司からって分かるから、携帯さえ手に取らない。


今は顔も見たくなければ、声も聞きたくない。


思い出すだけで、フツフツと黒い感情が湧き出る。



それでも……。


好きなんだって思う自分が存在する。



だから……。


会えないし、話せない。


何するか分からないし、どんな暴言吐くか分からない。


好きの感情と憎しみの感情が比例する。


この暑さで喉が枯れるような思いをすれば、私のつらい気持ちも和らぐんじゃないかって思った。


実際、今、立っているのもやっとっていうくらいふらついているんだけど、つらい気持ちは変わらなくて。


ましてや体中がこの感情に包まれていくようで……。


ただ呆然とそこに立っているのが精一杯だった。



その時――。


携帯から慎司の着信じゃない音が鳴り、私は無意識に手にとっていた。



「……もしもし」



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