【短編】愛トキドキ憎しみ
「どこにいるの?」


「……海」


「よく遊びに行くあの海?」


「……うん」


「わかった、そこにいて。今から行くから」


「嫌、慎司には会いたくない!!」


「俺一人で行くから」



プツッ……ツーッツーッツーッ。



電話の切れた音が耳に鳴り響く。


私は携帯を左手に持ったまま、力なく腕をおろす。



何で……。


電話に出たんだろう。


彼だったから?


暑さでボーッとしてきた頭をフル回転させて考えてみても、その答えは見つからなくて。


だけど……。


彼の声を聞いて少しだけ気持ちが和らいだ。


それだけは確かで。


私の中に生まれた新しい小さな感情に気付く前に、意識が朦朧としてくる。



「玲花っ!」



私を呼ぶ声に笑みが零れる。


走って近づいてきた彼の胸の中に……


そのまま倒れこんだ。



……智……輝。




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