【短編】愛トキドキ憎しみ
復讐と言う名の行為
ユラユラと揺れる体。
砂の音と共に波の音が次第に遠くなっていく。
真上から降り注ぐ強い日差しは遮られ、だけど……体は熱を増していく。
それは抱かれているから。
触れている部分が、身体越しに伝わる熱で蒸せていく。
朦朧とした意識でも、この状況をしっかりと理解できていた。
ドキドキドキドキ……。
こんな経験初めてだから。
慎司にだってされたことないんだから。
恥ずかしさのあまり、この状況を理解できるんだ。
「……智輝、ダメ?」
思うように大きい声が出ない私の言葉に、智輝は敏感に反応してくれる。
正面を見ていた顔をゆっくりと私に向けて、笑顔で答える。
「おとなしく抱かれてて」
笑顔だし優しい声なんだけど。
「……怒って……る?」
笑顔と優しい声の端に、トゲが見えるのは気のせい?
「……いいから少し黙って。体つらいんだろ?」
「う……うん」
その言葉を聞いて、私は静かに目を閉じた。
言われるがままおとなしく智輝に身を任せて。
迷惑かけてごめんね。
心の中で呟いて、私はお姫さま抱っこをされて砂浜をあとにした。
恥ずかしいけど心地よくて。
ぐちゃぐちゃだった心は彼に少し和らげられて。
気付けばそのまま眠りについていた――。