【短編】愛トキドキ憎しみ
相変わらず可愛いな。


なんて客観的に見れる自分は、少し成長したなって思う。


あの出来事以来、初めて千理と二人きり。



「謝らないから……」



両手を握り締め、威嚇するかのように私を睨み付ける。


千理、やっぱり……。



「いいよ。千理さ、慎司のこと好きなんでしょ?」



私の言葉に少し驚いた表情を見せる千理。


……確信した。



「私、慎司のこと本当に好きだった。それにね、千理のことだってなんだかんだで好きだったよ」



ムカついたりすることだってあった。


だけど、それでも一緒にいたってことは、嫌いじゃなかったんだよね。


離れてみて気付いたよ。



「ごめんね、気持ちに気づかなくて。千理ともちゃんと話しておきたくて」



それまで我慢していたのか、千理は大きな目から一粒の涙を零した。



「……ずっと慎司のこと好きで……玲花に会って……慎司変わって……」



やっぱり慎司のこと、好きだったんだ。


どんな思いで私たちの側にいたのかと思うと、切なくて苦しくて仕方がない。


それに、泣くことを必死に堪えながら話す千理を見て、やっぱり憎めないって思えた。



「……もしね、次があれば正々堂々と勝負してよね? 私、千理のこと嫌いになりたくないからさ」



私はそれだけ言って千理の前から立ち去った。


後ろから「ごめんなさい」と呟く声を聞きながら……。




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