この恋心に嘘をつく
「こちらこそ。さて、まずは今日のスケジュールを教えてもらおうか?」
上司らしく振る舞う環に、思わず笑ってしまいそうになる。
「はい。羽村から引き継いでいます」
取り出したスケジュール用紙を見て、環が眉間にシワを寄せる。
「専務付き秘書が、手帳も持ってないのか?」
「あ、持ってます。ただ、仕事用とまだ分けていなくて…」
上司のスケジュールを、プライベートの手帳に記すのはよろしくない。
忙しくて、新しいものを買うのを、すっかり忘れていた。
「だと思った。――ほら」
引き出しから、ラッピングされたものを取り出し、渡された。
環の顔を見てから、開けてみる。
「これは…いいんですか?」
中身は、手帳だった。
なんてタイムリーな贈り物だろうか。