この恋心に嘘をつく
「君と居ると、財布の中身が減っていくな」
環が、凛子の腕時計に目をやる。
確かに、もらってばかりだ。
「なら、たくさん仕事をして、財布の中身を増やさなくては。この手帳を埋め尽くすくらい」
「まるで働き蟻だな」
環が楽しげに笑うから、凛子もつられて笑いだす。
本当に、もらってばかり。
仕事に、腕時計に、手帳。
派閥争いについて、聞いておいた方がいいのだろうか?
やはり、社長になりたい?
今の笑顔を見ていると、野心があるようには見えない。
「どうかしたか?」
「あ~…手帳のお礼を言っていないと思いまして。ありがとうございます!」
誤魔化すように、語尾を強くしてみた。
案の定、環は追及してこない。
「今日は来客の予定がありません。会議も…ないですね」