この恋心に嘘をつく

デスクへ戻り、凛子は新しい手帳を開く。

触っただけでわかる。
これは、適当な店で買ったものではない。

革のカバーは、使っていくうちに良い色合いになるだろう。


「いくらかしら…?」


値段を気にするなんて、俗っぽい考えだろうか?

でも、やっぱり気になるのだ。


「まずは、スケジュールを書き込んで――」


今は仕事に集中しよう。
デスク回りも整理しないと。

専務付きとなった初日は、予想とは違い穏やかだった。

とても穏やかで、忘れてしまっていた。

嵐の前は、穏やかだということを――。




*****


秘書の仕事は、ドラマとは違う。
ドラマの中では華やかな職場に思えたし、そこまでハードだとも思わなかった。


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