この恋心に嘘をつく
デスクへ戻り、凛子は新しい手帳を開く。
触っただけでわかる。
これは、適当な店で買ったものではない。
革のカバーは、使っていくうちに良い色合いになるだろう。
「いくらかしら…?」
値段を気にするなんて、俗っぽい考えだろうか?
でも、やっぱり気になるのだ。
「まずは、スケジュールを書き込んで――」
今は仕事に集中しよう。
デスク回りも整理しないと。
専務付きとなった初日は、予想とは違い穏やかだった。
とても穏やかで、忘れてしまっていた。
嵐の前は、穏やかだということを――。
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秘書の仕事は、ドラマとは違う。
ドラマの中では華やかな職場に思えたし、そこまでハードだとも思わなかった。