この恋心に嘘をつく
「私達は、誰一人として専務の信用を得られなかった。だから、専務はあなたを連れてきた」
紅茶を一口飲み、満理は苦笑する。
信用されないというのは、やはり心が痛い。
「…どうなんでしょうね」
「――?」
凛子の呟きは、小さすぎて満理には聞こえなかった。
「あの、総務部の藤ですが、安生さんはどちらに?」
給湯室を出ると、制服姿の女子社員がいた。
「安生は私です」
「はじめまして。総務部の藤です」
藤と名乗った女性は、軽く会釈をした。
淡々と話す人だ。
「書類の提出を確認出来なかったので、直接受け取りに来ました」
「書類? それなら、朝田さんにお願いしましたけど」
羊羹を買いに行く前、確かに朝田にファイルを渡した。