この恋心に嘘をつく
「こちらには届いていませんが」
「え…」
慌てて、朝田の姿を探す。
秘書室には居ないようだ。
「常務室かもしれないわ」
「探してきます」
満理に言われ、凛子は駆け足でエレベーターへ向かう。
「――! 朝田さんっ」
ちょうど、エレベーターから朝田が降りてきたところだった。
「何?」
「お昼前に頼んだ書類なんですが、総務の方が届いてないそうで…」
「書類? そんなの、知らないわよ」
返ってきた言葉に、絶句する。
先程は親切に思えたのに、今は別人のように冷たい。
「確かに渡しました」
「私は知らないわ。大体、自分の仕事を人に押しつけるなんて、無責任にも程がある」