この恋心に嘘をつく
厳しい言葉に、二の句が継げない。
「……」
朝田は一瞥すると、凛子の隣をすり抜けていった。
「あの――」
「あ、書類はすぐに持っていきます。データがパソコンに残っているので」
「急ぎの書類ではないので、今日中に提出してもらえば問題ありません。では」
藤は一礼すると、エレベーターではなく階段へと向かう。
「……」
ショックだった。
小さなミスをしたという事実よりも、朝田に騙されてしまった事が。
はじめから、手伝う気などなかったのだ。
「安生さん…大丈夫?」
心配した満理が、様子を見に来てくれた。
「大丈夫です。書類を準備しないといけないので、戻りますね」
凛子はエレベーターに乗り込み、カチカチと乱暴にボタンを押す。