この恋心に嘘をつく
泣くほどの事じゃない。
その証拠に、涙は出てない。
でも、気持ちが沈んでしまう。
どうして、あんなことを…。
自分が悪いの?
それとも、彼女?
これが、取引先との重要な書類だったら、自分だけの問題ではなかった。
不幸中の幸いと言うべき?
「……」
考えてもわからない。
朝田に嫌われるようなことをした覚えはないのに。
エレベーターが開き、凛子は専務室へと帰る。
パソコンを起動させ、書類のデータを探す。
「…あった、これだ」
安心して、肩から力が抜けた。
でも、気持ちは沈んだままだ。
「…はぁ」
「盛大なため息だな」
専務室から、環が顔を出す。
タイミング良く、凛子のため息を聞いたらしい。