この恋心に嘘をつく
これじゃ、ダメだ。
気持ちを入れ換えて、仕事をしないと。
ひとりじゃ広すぎるフロアは、暖房がきいているのに、寒く感じた――。
*****
「ない…」
翌朝、凛子は少し早めに出社した。
秘書室には数名しかおらず、環もまだ出社していない。
給湯室で、今日の来客用のお茶を確認するついでに、昨日買った羊羹も見ておこうと思ったのだが…。
(昨日、確かに入れたはず…)
冷蔵庫に貼っておいたメモも、無くなっている。
誰かが食べた?
でも、新人の凛子が間違うなら有り得るが、他の秘書ならば来客用のお菓子だとわかるはずだ。
「どうかしたの?」
「羽村さん…昨日買った羊羹がなくて…」
「羊羹? 私は…知らない」