この恋心に嘘をつく
羽村は申し訳ないように笑うと、自分のデスクへと戻る。
「…買いに行かないと」
自分の不注意だから、自腹だろうな。
昨日に続いてのミスで、朝からまた気持ちが沈んでしまう。
「安生さん、大丈夫?」
「はい。少ししたら、買いに行ってきます」
心配する満理に笑いかけて、凛子は秘書室を出ていく。
「……」
その背中を見送りながら、満理は秘書室を見回した。
二度あることは、三度ある。
そんな言葉を思い出し、頭が痛くなった。
こんなことがこれから先も続くのかと思うと、誰も信用なんて出来ない。
「ふぅ…」
同じ会社の同僚に対して、こんな気持ちを抱くなんて――。