この恋心に嘘をつく
「わぁ…」
屋上の扉を開くと、青空が視界に飛び込んできた。
気持ちが良くて、思わず笑みが浮かぶ。
「良い場所でしょう。気分転換をしたい時は、ここに来るの」
風で揺れる髪を手で押さえながら、フェンスへと歩み寄る。
周りは高いビルが多いが、屋上へ出るとそんなことも気にならない。
「気分転換、ですか?」
「最初は、辞めたくて仕方なかったの」
ベンチに腰を降ろし、満理は自分のことを語り出す。
珍しい事だから、凛子は黙って聞くことにした。
「この会社に入るまで、派閥争いがあるなんて知らなかったの」
実際、誰もが争っているわけではない。
社員の多くは、高みの見物で話の種くらいにしか思っていない。
「入ってみたら、今の貴女みたいな状況よ」
「私?」