この恋心に嘘をつく
書類をわざと無くされたり、間違った伝言を教えられたり。
本当に、毎日が嫌で嫌でたまらなかった。
「皆、試してるのよ」
空を見上げると、白い雲が太陽の光を遮っていた。
目を細め、流れる雲を目で追う。
「新しく入った子が、使えるのか、誰に付くのか」
「そんなこと、しなくても…」
凛子は、未だに納得してはいない。
派閥争いという、現実味の薄いこの現状を。
「あなたの場合は、もっと面倒ね。はじめから専務派だと、皆知っているから」
「梅原さんは、どうして辞めなかったんですか?」
誰かに付いたから?
でも、満理が誰かに付くようなタイプだったら、観月はあんなことを言わないはずだ。
「出る杭は打たれるものよ。ならば、出なければいい」
せっかく入った大企業。
くだらない派閥争いに巻き込まれて、辞めたくはない。