この恋心に嘘をつく
「副社長は、良くも悪くも真面目な人よ。失敗すれば厳しいけれど、自分の仕事をする分には何も言わない」
見た目通り、他人に厳しく、自分には更に厳しい。
「でも常務は、ちょっと面倒ね」
「朝田さんは、常務派…」
だからなのか、と腑に落ちた。
真意はわからないが、常務派だから凛子にきつく当たるのだ。
「さぁ、話は終わり。仕事に戻らないと」
「ありがとうございます。話してくれて」
立ち上がり、大きく伸びをする。
外の空気を吸って、体が軽くなったような気がするのは、気のせいだろうか。
「そうだ。羊羹が無くなった犯人、知りたい?」
「……いいです。聞かないでおきます」
「そう。じゃあ、仕事に戻りましょう」
風で、前髪が揺れる。