この恋心に嘘をつく
燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らん
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本日は給料日である。
会社勤めは思っていた以上に心身ともに疲れるが、この日を迎えると、そんな疲れも吹っ飛ぶ勢いだ。
入社して2回目の給料日。
一番最初の給料は、ほぼ手をつけていない。
スーツや靴などは、貯金を崩して買ったので、最初の給料は使った分を戻すつもりで、貯金に回したのだ。
なので、2回目の給料日では、少しだけ贅沢をしようと思っていた。
「家賃とかに飛ぶけどねぇ」
帰り支度を始めながら、凛子は感慨深い気持ちでいた。
まだ2ヶ月だが、もう2ヶ月も経ったのだ。
挫折そうにもなったが、何とか持ちこたえている。
それに、最近は嫌がらせの頻度も減っていた。
こんな日が続くなら、きっと来月も大丈夫だ。
「いい時計だね」
「あ――」
思いもしない人物の登場に、凛子は言葉が出てこない。