この恋心に嘘をつく

正直、誰が社長になっても気にはしない。

環が社長になったからといって、自分が優遇されるとは限らないのだし、環を社長にするために誰かを蹴落とすような真似もしたくない。


「……」

「乗らないのか?」


気付けば、とっくにエレベーターの扉は開いていた。


「あ、乗りますっ」


慌ててエレベーターに乗り込み、チラリと環を見上げてみた。

怒っているようには見えないが、声はかけずらい。


(私、専務について何も知らないんだ…)


いつの間にか、勝手に近い場所に立っていると思っていた。

でも本当は、他の人と何も変わらない。

隣に居る筈なのに、こんなにも遠くに、環を感じているから――。




*****


常務室の広さは、専務室と然程の差はない。

ソファーの色が違ったりする程度だ。


< 128 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop