この恋心に嘘をつく
「ふぅん…。素直そうな子だよね。兄さんもどこで見つけてきたんだか」
世慣れていないのが、見て分かる。
それなりに空気も読めるようで、鈍くはないのだろう。
(兄さんの周りにはいないタイプだよな)
画面から視線を逸らさず、考え事に耽る。
「気になりますか?」
「そりゃあね。あの兄さんが、とうとう自分に秘書を付けたんだから」
徹底して他人と距離を取っていた環。
派閥争いに興味がないのか、事の成り行きを見守っていたのか。
どちらにせよ、入社してからずっと、目立った動きをしてこなかったのだ。
それが、今になっての急激な変化。
「本気で取りに来たのかもね」
「……」
朝田は、何を言うべきか迷う。
同意すべきか、意見するべきか。