この恋心に嘘をつく
「ま、俺としては兄さん達が潰しあってくれた方が助かるけど」
楽しそうに笑う恭介に、朝田は躊躇いつつも問いかける。
「あの、常務が社長になりたい理由は…その…」
「それ、君に言う必要ある?」
「……いえ。失礼致します」
拒絶の言葉は、どれほど言い繕っても苦しいものだ。
朝田は足早に常務室を出ていく。
(今あの子に何かしても、環兄さんへのダメージは少ないよなぁ)
ふと、ボタンを押す手が止まる。
画面は真っ黒だ。
「あ~あ…死んじゃった」
ゲームオーバーの文字に、少しだけ残念そうな顔をして、電源を落とした――。
*****
給湯室で自分の飲み物を準備しながら、ふとカレンダーに目がいった。
来月には、新入社員達がやって来る。
本当に、あっという間だ。