この恋心に嘘をつく

「ま、俺としては兄さん達が潰しあってくれた方が助かるけど」


楽しそうに笑う恭介に、朝田は躊躇いつつも問いかける。


「あの、常務が社長になりたい理由は…その…」

「それ、君に言う必要ある?」

「……いえ。失礼致します」


拒絶の言葉は、どれほど言い繕っても苦しいものだ。

朝田は足早に常務室を出ていく。


(今あの子に何かしても、環兄さんへのダメージは少ないよなぁ)


ふと、ボタンを押す手が止まる。
画面は真っ黒だ。


「あ~あ…死んじゃった」


ゲームオーバーの文字に、少しだけ残念そうな顔をして、電源を落とした――。




*****


給湯室で自分の飲み物を準備しながら、ふとカレンダーに目がいった。

来月には、新入社員達がやって来る。

本当に、あっという間だ。


< 131 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop