この恋心に嘘をつく
「あぁ、ここに居たのね」
コップに口を付けるのと同時に、観月が給湯室に顔を出す。
「熱…っ」
驚いて、唇に紅茶が軽くかかる。
「大丈夫?」
「は、はい。…ご用ですか?」
コップを一旦置き、観月と向き合い。
やはり、環とは違う緊張を覚える相手だ。
「来週末の食事会を、急だけれど今週末に変更するそうなので、専務のスケジュール調整をお願いします」
「はい。食事会というと、ご家族の、ですか?」
観月が頷くと、この間の恭介との事が脳裏に蘇った。
「…専務は、ご兄弟と仲が良くないんでしょうか?」
思わず口に出してしまったが、気づいたときにはもう、遅い。
観月は少し考え込み、答えてくれた。