この恋心に嘘をつく

環が何を思って近づくなと言ったのかが分からない。


「君は何も知らないからだ」

「……それは、専務が話さないからです」


教えもしないのに知らないからなんて、横暴すぎる。

凛子の反論に、環は答えない。


「……はぁ」


環がため息をつく。

そうだ、環は追及しない。

それは、そう――そういう事だ。


「ふ、ふふ…」

「何がおかしい?」


思わず漏れた笑い声に、環が怪訝な顔をする。

おかしい?
おかしいわよ。

笑ってるのに、涙が出るんだから。


「今わかりました」


涙を乱暴に拭い、環を見据える。


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