この恋心に嘘をつく
「専務は、私の気持ちを知るつもりなんてない」
むしろ、そんなことをする必要さえ無いと思っている。
追及しないのは、それ以上の事を知る気がなくて、凛子の考えを聞くつもりもないということ。
「専務は、信用しないんじゃない。はじめから、信用する気がないんです!」
「何を、突然――」
「私は人形じゃない。あなたのおかげで就職出来たけど、だからって、ただ黙って言うことだけを聞いていられるほど、私はできた人間じゃないんです!」
自分が、馬鹿みたいに思えた。
こんなことで、感情が爆発して情けない。
でも、環に対する不安は、ずっと感じていた。
些細なことが、積もり積もっていたのだ。
「やめてくれ。喧嘩したいわけじゃないんだ」
ほら、また離れる。
感情をぶつけ合うことは、例え醜くても互いの心を見せる事だ。
でも、環はそれをしない。