この恋心に嘘をつく

求人広告を見つめながら、凛子はため息を漏らす。

環は今、何をしているのだろう?


(ダメね、思い出すなんて)


忘れた方がいい。
そうすれば、新しい一歩を踏み出すことができるのだから。





*****


安生 凛子は、休暇を取っている。

秘書室では、そういう扱いになっているが、勘の良いものは気づいていた。

安生 凛子は辞めたのだ、と。


「室長、専務のスケジュールなんですけど――」

「担当は貴女ではないでしょう?」


観月の言葉に、羽村が言いにくそうな顔をする。


「でも、安生さんはお休みですし…」

「彼女が休みの間は、なるべく私が受け持ちます。他の者も、よいですね?」


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