この恋心に嘘をつく
秘書室に響く、観月の声。
全員頷きはしたが、納得しているわけではないようだ。
「では、仕事に戻りなさい。私は、専務に会ってきます」
観月が秘書室を出ていくと同時に、水を得た魚のように話し出す。
「やっぱり辞めたのよ。でも、原因は何かしら?」
「実はスパイだったとか?」
「使えなかったんじゃないの?」
興味本意で囁かれる話は、あまり気分の良いものではない。
満理は聞きたくなくて、席を立つ。
「私はあの子、気に入らなかったのよね」
朝田の言葉に、何人かが合わせるように頷く。
この話題で、しばらく秘書室は持ちきりだろう。
満理は呆れながら、秘書室を出ていった。