この恋心に嘘をつく
「……俺が悪いのかな?」
環の問いに、観月は即答した。
「そう思うということは、そうなのでしょう」
「……かもしれないですね」
環は苦笑して、引き出しを開ける。
あの日、凛子が返した腕時計が入っていた。
あの日の凛子の顔が、忘れられない。
彼女は笑っていた。
瞳を潤ませて。
こんなことになるなんて、思っていなかった。
(まさか、辞めると言われるなんて…)
自分で言うのは癪だが、この会社は条件としては申し分のない就職先だと思う。
凛子自身、就職を望んでいたし、多少仕事が難しかったりしても、そう簡単には辞めないと思っていた。
なのに、彼女は辞めると言った。
仕事や給料ではなく、環が原因で。
「……はぁ」