この恋心に嘘をつく

引き出しを閉め、観月を見つめる。


「信用する気が、はじめからないそうです」


あの日言われた言葉は、胸にナイフが突き刺さったような衝撃を覚えた。

そんなこと、思いもしなかった。


「――専務は、彼女をちゃんと見ていましたか?」

「見てましたよ」

「本当ですか?」

「……」


観月は、何を言いたいのだろう。

自分の秘書なのだ。
ちゃんと見ていたに決まっている。


「彼女は――安生はきちんと、専務を見ていましたよ。だから、離れたのでしょうね」


観月の瞳は、いつだって嘘を見抜く。

凛子の“休暇”の理由を、見抜いているのだろう。


「……」

「専務。もしも、少しでも後悔があるのであれば、その憂いを断つべきです」


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