この恋心に嘘をつく

メニューを見るのも、選ぶのも嫌いじゃない。

だからつい、人よりも時間がかかってしまう。

見れば、環は既に決めているようだった。


「えっと、この和風ハンバーグにします。ご飯とお味噌汁付きの」

「了解」


環が呼び出しボタンを押すと、店員がすぐさま飛んできた。


「和風ハンバーグを、ご飯とお味噌汁で。それから、ミックスグリルを――これもご飯とお味噌汁。ご飯は大盛りで」

「かしこまりました。ドリンクバーのご利用はどうされますか?」

「お願いします」


注文を手早く済ませ、店員は一礼して去っていく。


「どうかした?」

「慣れてるなぁ、と思いまして」


すらすらと注文する姿が、意外だった。

高級レストランならば納得だが、こういうファミレスには来ないような人に見えたから。

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