この恋心に嘘をつく
周りの音が、妙に大きく聞こえる。
ドリンクバーだけのカップルに、ノートパソコンを開いているスーツの男性。
目の前の環に集中しなきゃいけないのに、何故だか、周りにばかり意識が向かう。
「何か、資格とかは? 持ってる?」
「…免許くらいです」
「今後、資格とか取る予定は?」
「そうですね、興味はあります。資格を持っていれば、就職も有利になりますし」
「じゃあ、なんで今まで取らなかった?」
意識を引き戻される。
環は、笑っていなかった。
「それは…」
「――」
環は何も言わずに、凛子の答えを待っている。
その場しのぎの言葉は、すぐに見透かされてしまう。
本心を、語らないと。
「――不採用続きのわけを、私、わかってたんです」