この恋心に嘘をつく

周りの音が、妙に大きく聞こえる。

ドリンクバーだけのカップルに、ノートパソコンを開いているスーツの男性。


目の前の環に集中しなきゃいけないのに、何故だか、周りにばかり意識が向かう。


「何か、資格とかは? 持ってる?」

「…免許くらいです」

「今後、資格とか取る予定は?」

「そうですね、興味はあります。資格を持っていれば、就職も有利になりますし」

「じゃあ、なんで今まで取らなかった?」


意識を引き戻される。

環は、笑っていなかった。


「それは…」

「――」


環は何も言わずに、凛子の答えを待っている。

その場しのぎの言葉は、すぐに見透かされてしまう。

本心を、語らないと。


「――不採用続きのわけを、私、わかってたんです」

< 40 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop