この恋心に嘘をつく

膝の上に乗せた手に、力が入る。


「私は、やりたいことが見つからなくて、それを見つけるために、大学に進学しました」


大学の4年、それだけあれば自分がやりたいことが見つかる。

そう思っていた。


「でも結局、やりたいことは見つからなくて。そのまま、特にこの会社に入りたい、っていう強い気持ちもないまま、いろんな会社の面接を受けて…」


下手な鉄砲も数打てば――なんてわけじゃないか、どれか一社くらいは受かるだろう。

そんな風に考えていたけど、現実は思っていた以上に厳しかった。


「面接官は、わかってたんです。私には、この会社でやりたいことも、自分の強い意思もない、って」


面の答えは、いつだって模範解答。

そこに、自分の言葉はない。


「そんな人よりも、やっぱりやる気のある人を雇いたいですよね」


自分にとって、仕事ってなんだろう?

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