この恋心に嘘をつく
「――」
沈黙が続いて、1秒が一時間のように感じる。
何も言われないことが、不安を煽る。
「お待たせいたしましたぁ。和風ハンバーグのお客様~」
重苦しい雰囲気を壊したのは、元気な店員の声だった。
思わず顔を上げると、環の顔が視界に入る。
(笑って、る…)
バカにしている笑顔じゃない。
これは、どういう意味の笑顔なんだろうか?
「それは彼女に」
「かしこまりました。ご注文はお揃いですか?ごゆっくりどうぞ」
店員が立ち去るの同時に、環はナイフとフォークを手に取る。
「さぁ、食べようか」
「は、はい…」
なんだか、彼の意識は自分から、ミックスグリルに移ったように思う。
(まぁ、食べますけど…)