この恋心に嘘をつく
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日曜日とバイトの休みが重なることは、まず無い。
それなのに、店長の計らいなのか、今日は日曜日で、しかもバイトは休み。
こんな貴重な日は久しぶりだったから、つい友達に電話して、出かけてしまった。
「就職おめでとう」
「ありがと。いろいろ不安はあるけど、なるようになるわよね」
大学時代からの友人である崎村 美晴は、友人の中で誰よりも早く内定をもらっていた。
勤め先は出版社。
配属された部署は、園芸雑誌らしい。
「映画か何かみたいよね。その話を聞くと」
「現実よ。――ねぇ、これはどう?」
黒いスーツを、自分にあててみる。
今日は、就職するにあたり、必要なものを揃えに来たのだ。
「普通」
「なら、合格ね。値段も手頃だし、これにしようかな」
「普通で合格なの?」