この恋心に嘘をつく
「私、頑張るわ。あの人を失望させない」
「…そう。応援してる。大丈夫よ、あんたなら」
美晴は優しく、けれど自信を持って頷いた。
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「観月さん。来月、新しい秘書が来るので、お願いします」
秘書室の長を呼べば、何故だか全員振り返る。
多くの視線を集めても動じないのは、慣れているからなのか。
「お話は聞いております。専務のご紹介だとか」
眼鏡をかけた女性が、ゆっくりと環に歩み寄ると、他の秘書は示し会わせたように仕事へ戻る。
彼女が秘書室の室長、観月 玲衣――社長秘書でもある。
「はい。研修期間は観月さんにお任せしますが、彼女は私付きの秘書としますので」
「承知しています。少し、よろしいでしょうか?」