この恋心に嘘をつく
観月が自分のデスクへ戻るのを確認して、羽村が立ち上がる。
「最初は、ここ。給湯室ね」
奥の棚を開けて、中を見せてくれた。
「重役の方達は、それぞれお好きなコーヒー豆などがあるから、間違えないで」
棚の外側には、きちんと【社長】【副社長】と、ラベルが貼ってある。
「専務のは、ここね。専務はブラック派で、豆にこだわりはないけど、苦ければ苦いほど良いみたい」
【専務】のラベルが貼ってある棚の中には、黒いマグカップや、封を切ってあるコーヒー豆の袋が入っている。
「私達のは、ここ。コップは間違えないよう、注意して。うるさい人がいるから」
「はい、気をつけます」
「お茶とかは、好きなのを飲んで。でも、こっちの棚に入ってるのは個人のだから、飲んじゃダメ。自分で持ってきても良いのよ」
丁寧に教えてくれる羽村に、凛子は有り難く思う。
「ここの棚は、来客用。高いカップとかばかりだから、割らないよう気をつけて」
それから、冷蔵庫などの説明を一通り受けてから、給湯室を出た。