この恋心に嘘をつく
「まぁ、私としては早く身を固めてもらいたい所だな」
3人の息子は、揃って独身だ。
急かすつもりはないが、やはり結婚してくれた方が安心する。
「一番可能性があるのは、環兄さんだろ?」
恭介の意味ありげな視線に、環は気にした様子もない。
「独身よりは、既婚者の方がいいだろう。後々を、考えれば」
辰馬の言葉で、全員の空気が一瞬にして張り詰める。
郁子と視線が合い、環はそっと目を伏せた。
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「明日から、専務付きとなります。良いですね」
「はい」
1ヶ月の研修期間は、あっという間に終わった。
未だに不安はあるけれど、基本的な事は学んだはずだ。