この恋心に嘘をつく
「何か、聞いておきたいことは?」
観月に問われるが、すぐには出てこない。
凛子は少し考え、聞いてみることにした。
「この会社には、派閥がありますか?」
「――こちらへ」
周りが聞き耳をたてている。
観月は立ち上がり、秘書室を出た。
見渡しの良い廊下で、観月は凛子と向き合う。
「誰から聞きました?」
「いろいろな人から、聞かれました。専務派なのか、と」
凛子が何も知らないと気づくと、皆二の句を示し合わせたように閉ざしてしまう。
「――そうですか。派閥は、あります」
観月がハッキリと告げた。
「我が社は、親族経営です。社長も、先代から社長の席を継ぎました」
外の景色を眺めながら、観月は物語を読むように話す。