今日こそ絶対に自殺します。
ーーーそれからまた1年が過ぎ、
俺はとうとう30歳を迎えた。
ちゃんとした職についていなければ、彼女だっていない。
やはり俺に残されたものは格闘技しかなかった。
「兄貴さーん、もういい加減やめたらどうですか…?」
とあるジムで、年下の男が声をかけてきた。
「あともう少しーーー」
俺がそう言うと、男は呆れ顔をした。
「ったく…どんなに鍛えても、兄貴さんは格闘家にはなれないっすよ?
ーーー相手に拳を打ち込むことすらできないんすから」
あれから俺はボクシングをやめ、様々な格闘技に乗り移ろうとした。
プロレス、柔道、空手、レスリング、そして相撲までーーー
格闘技とされているものなら、俺はなんだって挑戦した。
だけどーーー
『あんたは格闘技に向いてないよ。
相手を見ると固まっちまうんだもん』
どの格闘技に挑戦しても、俺は向いてないと言われるだけであった。
俺はこれからどうやって生きていけばいい?
俺から格闘技が無くなってしまったら、俺は一体どうなってしまう?
怖かった。
自分の未来が怖かった。
だからかもしれない。
俺は拳に力が入らないまま、ずるずると引きずるようにして、格闘界にとどまっていようとしたのだ。